NEWS
2021.11.18
【オフィシャルライブレポート】
ヤバイTシャツ屋さん、初の大阪城ホールワンマンで告げた感謝と願い「夢みたいな景色を見せてくれてありがとう」
ヤバイTシャツ屋さんが11月14日、大阪・大阪城ホールでの初の単独公演『ヤバイTシャツ屋さん 大阪城ホールワンマンライブ「まだ早い。」』を開催した。
2016年に大阪・心斎橋BIGCATで同名のライブを行った際にメジャーデビューを発表した3人が、あれから5年の歳月をかけて立った夢の大舞台。開演前には、ステージ上の巨大なスクリーンに「大人気キャラクター」と自称するタンクトップくんが映し出され、ライブのルールとマナーを指南。そして、暗転した舞台上に2人の男女が現れたかと思えば、ダンサーを加えた総勢18名による壮大でベタなミュージカル=「We love Tank-top」に突入! 沸き上がる拍手を切り裂くようなアウトロの爆音を受け、突如現れたメンバーを代表し、「『ヤバイTシャツ屋さん 大阪城ホールワンマンライブ「まだ早い。」』、始まるよ~!」と、こやまたくや(Gt. Vo)が宴の幕開けを告げる。「ハッピーウェディング前ソング」では観客が一糸乱れず手を上げる絶景をいきなり生み出し、続く「Tank-top of the world」ではメンバーの掛け声に合わせ炎が飛び出す特効演出で魅せるなど、冒頭から大規模公演ならではの見応えあるシーンの連続。一転、ヘヴィなリズムが振動となって体に伝わる「無線LANばり便利」では、物理的な距離を感じさせない一体感で大阪城ホールを瞬時にライブハウス化し、飛び跳ねるオーディエンスからは心底楽しそうな笑顔がこぼれる。その後も「Universal Serial Bus」「Tank-top Festival 2019」と、序盤から一気に畳み掛けていく。
MCでは、「(会場中の客席を眺め)ヤバイTシャツ屋さん、ネクストブレイクと言われ続けて8年やってまいりましたが、今日のこの光景を見た結果、売れたと認定します(笑)。初めてこんなクソでかいところでのワンマンですけど、おもしろMCいきましょうよ」というこやまの無茶ぶりに、「この会場はきれいな方が多いですね。こちらから、べっぴんさんべっぴんさん……」としばたありぼぼ(Ba.Vo)が続けるものの、永遠に終わらない「べっぴんさん」の連呼にこやまが「いや、この会場レベル高いな!」と突っ込むなど、相変わらずの空気感には場がほっと和んだ。ヤバT流メロコア節炸裂な「sweet memories」、「お世話になった『ちちんぷいぷい』に捧げます!」(こやま)と始まった関西のテレビ情報番組の20周年記念ソング「はたちのうた」、そして、「メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲」では、360°見渡す限り誰もがジャンプしている最高のパノラマを創出。哀愁漂うサウンドにらしさ溢れる歌詞を乗せた「眠いオブザイヤー受賞」、盛りに盛ったタイトルに偽りなしの「鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック」と、ライブ映えする楽曲が尽きないセットリストからは、バンドの8年の歩みと重みを感じる。
ここで、「まだ序盤やけどクセになっちゃいそう」と過去最大級のワンマンに充実した表情で語るもりもりもと(Dr.Cho)に、しばたが「今度一人でディナーショーとかやったら?」とけしかけ、そのときに行うビンゴ大会の勝者へのプレゼント案として、隙あらばもりもとの住所やLINE IDを言おうとするこやまの声を、絶叫&激しいドラミングでかき消すもりもと(笑)。そこから、やりたい曲が多過ぎてセットリストを決めるのにもめたと吐露した3人の意向を反映した「ベストジーニスト賞」「珪藻土マットが僕に教えてくれたこと」「げんきもりもり!モーリーファンタジー」と立て続け、「泡 Our Music」ではその名の通りの大量の泡が舞う中で熱唱。激しく乱れ狂う照明もろとも導いた「DANCE ON TANSU」では、アリーナをダンスフロアへと見事に変貌させていく。
TikTokとバンドマンの関係に言及するこやまのMCに続き、スペシャルゲストとして登場したのは「Bluetooth Love」のMVで全編歌唱するユニット、ぷりてぃ~♡パーティ。MV出演者による生ライブというレアな一幕に大いに盛り上がる。「自分たちの言いたいことを全てこの曲に詰め込んで歌います」と期待させつつ歌い出した「肩 have a good day -2018 ver.-」といい、爆裂サウンドで圧倒した「くそ現代っ子ごみかす20代」、スラッシャーなギターを浴びせた「NO MONEY DANCE」と、MCも曲調も緩急自在のライブに、くだらないことをポップに聴かせる手腕に、ヤバTの真価を思い知らされる。
「『まだ早い。』というタイトルは5年前に大阪の心斎橋BIGCATでメジャーデビューを発表するタイミングでやったライブの名前なんですけど、それがスケールアップして、お客さんも何十倍に増えて……」と喜びを隠さないこやまは、こうも続ける。
「バンドを始めたときは、こんなことになると思ってなかったです。ヤバイTシャツ屋さんはすごく運のいいバンドだと思ってて、みんながこうやって応援してくれてるおかげで続けられてるので。コロナっていうすごい危機があって、やっぱりバンドのライブを見に来る人とかバンドの音楽に興味がある人がグッと減っちゃったのは実感としてあります。今日も大丈夫かなって心配してたけど、結果これだけ来てくれて……自分たちだけでバンドってできひんから! バンドをずっと続けたいなと思ってます。そのために僕らもみんなに応援してもらえるように、いっぱいチャレンジして頑張るんで!」
そんなMCを受けての「サークルバンドに光を」は、大学時代に結成されたいちバンドが、ついに大阪城ホールワンマンにまでたどり着いた今を感動的に響かせる。こやまが「ラストスパート、楽しんでいけよ!」と口火を切ったクライマックスには、「とりあえず噛む」「癒着☆NIGHT」「ヤバみ」と、熱量の高いパフォーマンスとド派手な照明とのシンクロでとことん攻め立て、「いつでもいいから、みんな自分のタイミングで、絶対ライブハウスに戻ってきてください!」と、ホームグラウンドへの溢れる愛を届けた「Give me the Tank-top」、タンクトップフェアリーなる18名のダンサーとフィナーレを飾った「かわE」で本編は終了。
アンコールを求める手拍子に、「サクラじゃないよね?(笑)」とほほ笑んだしばたはもちろん、こやま、もりもとも感無量の面持ち。だが、「まだ果たせてない約束が1つあります」とこやまが切り出し、2020年3月より延期となっている三重・志摩スペイン村での野外ワンマンライブの話題に。その流れからこやまが「ちょっと、下見に行ってくるわ」と姿を消し、スクリーンに現地の映像が映し出されるバレバレの偽中継を挟んで披露されたのは、関西・東海エリアのテレビCMで耳慣れたあのメロディ=「きっとパルケエスパーニャ」。画面越しにキャラクターたちとの共演も果たした。
「ZORORI ROCK!!!」に続いて、「今からやるコール&レスポンスを無視してください」と(笑)、コロナ禍のライブの現状を逆手に取った「喜志駅周辺なんもない(コール&レスポンスなしver.)」、この日の集大成とも言える濃密な「あつまれ!パーティーピーポー」でエンディング。となるはずが、「ガチでやる予定はなかったんですけど、ヤバイTシャツ屋さんが初めて作った曲!」とこやまがぶち上げ、もともとのセットリストにはなかった「ネコ飼いたい」を急遽演奏。それにも関わらずバッチリ照明×音響を合わせたスタッフワークはさすがで、こやまが「ホンマに夢みたいな景色を見せてくれてありがとうございました!」と記念すべき一夜を締めくくる。
再度メンバーから、「来てくれてありがとうございました! これからもまた応援よろしくお願いいたします!!」としばた、「僕はアリーナとかドームで音楽をするバンドに憧れてやってきたので、今日は夢がかなったわけです、ありがとうございました!」ともりもと、「今日はへらへらしながらやるつもりやったのに、めっちゃ感動してしまいました。8年前とやってることは一緒やのに、これだけ見てくれて盛り上がってくれる人がいたら、そりゃバンドやるよな。バンドを続けさせてくれてホンマにありがとうございました! またおもろいことをやるんで遊びに来てください!!」とこやま。最後の最後までライブバンドであり続けたヤバイTシャツ屋さんが、全身全霊で駆け抜けた全31曲2時間20分だった。なお、この日のライブの模様は、2022年1月22日(土)CSテレ朝チャンネル1で放送される。
今後のヤバイTシャツ屋さんは、『ポルノ超特急2021』、『MERRY ROCK PARADE 2021』、『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM』、『COUNTDOWN JAPAN 21/22』等、年内は各地の冬フェスに出演。年明けの2022年1月14日(金)北海道・Zepp Sapporoより、全国ツアー『ヤバイTシャツ屋さん “Tank-top of the DVD IV” TOUR 2022』をスタートさせる。さらに、4月2日(土)千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールで行われるイベント『Red Bull SoundClash』では、こやまの中学校の先輩にあたり、MVを共同制作する間柄でもある盟友・岡崎体育との初のツーマンライブが実現する。
取材・文:奥“ボウイ”昌史